平成のままでいたかった
まるで故人を置いて世の中だけ先に進むような
なんとも言えない感じ
故人と過ごした年月を忘れろと言われているような
なんとも言えない感じ
私は先に進みたくないのだ
なにも置いていきたくないのだ
もちろん執着はよくないとわかっている
着る人のいなくなった衣類や
主がもう決して座ることのない勉強机や、
錆びついてしまった自転車や
そういった物さえも
処分することが故人を忘れてしまうことのように感じて罪悪感さえ感じる
そう思う日々の中で
ある時ふと
物に対する執着が消える瞬間があって
その隙にいくつかの物をゴミ袋に入れて
少しすっきりした部屋を眺めて
これで良かったのだと思って
そうした一瞬の晴れ間を経ても
まだまだ主を喪った物たちは部屋にあって
そしてまた執着する日々が戻るのだ。
これをあと何回か繰り返したら
部屋は空っぽになるだろう
でもやっぱり
私は先に進みたくないのだ
世の中が新しい時代を祝う中で
こんなことを思っている
ごめんなさい