2018年11月28日

私たちは「心のケア」をしません。

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自死遺族になってから知ったのが、「自死遺族を支援する」とうたう団体(任意、法人を問わず)の多さです。
2006年に「自殺対策基本法」が制定されて以来、さらにその数が増えてきたのではないでしょうか。

たとえば、お買い物をする時に選択肢があることは嬉しいことです。
高価だけれど品質の良い商品にしようか、品質はさておき安価で懐に優しい商品にしようか、デザインを重視するか何より機能を重視するか等、自分の価値観と懐具合によって商品を選べるのはありがたい事です。

自死遺族の支援も似ているのでは、と私は思います。
身近な人を突然亡くした時に、どんな支援が選択肢としてあるでしょう。

1)専門的な知識を修得した医師やカウンセラーによるカウンセリング、あるいは投薬。
2)宗教家や思想家の言葉。
3)同じ経験をした先輩遺族に話を聞く、もしくは聞いてもらう。
4)気持ちよりなにより、まずは法的なアドバイス(瑕疵物件の問題や債務整理等)。
5)(あるいは、もう思い出したくない、忘れてしまいたい、そうしないと生きていけない、という人も間違いなく存在します。)

「レスパイトハウス」は、そのどれにも該当しません。
理事は全員自死遺族なので、強いて言うなら3番と思われるかもしれませんし、その役割ができないことはないと思います。

でも「レスパイトハウス」は、治療ではなく思想でもなく、「場所」が存在するだけです。
送り出すご家族も「そこに行くなら安心」と理解して送り出してくれる確実な保養所。

私たちには何もできません。ただただ、安心して過ごせる家を、常にきれいにしてお待ちしたいと考えています。
身近な人を亡くした悲しみを忘れたい人も、忘れたくない人も、身近な人を亡くしたことで、生きることが以前より難しくなってしまっている方が、いつでも「ちょっと一人になりたい」と思う時に待っている場所。

そんな場所が日本にひとつくらいあってもいいと思いませんか?

私たちは発起人であり、運営者でしかありません。
このプロジェクトに賛同してくださった皆さんが、「自分もいつか行くかも」というお気持ちで、1000円程のご寄付をしていただければ、あっという間にレスパイトハウスは完成すると思います。

日本で、年間に自死で亡くなる人は2万人以上。たとえば家族が4人いたとしたら、自死遺族は年間8万人も生まれていることになります。
これが、親戚や職場の同僚や、かつての級友が、と考えたら、いったいどれだけの人が、自死で亡くなった人を思い苦しい日々を過ごしていることでしょう。または、ご遺族の同僚や知人友人も、どう声をかけたらいいのか、胸を痛めている方もどれだけいることでしょう。

「レスパイトハウスっていうのがあるんだって」と、いつか誰かに勧めたくなる場所を、作りたいと考えています。
(クラウドファンディングで寄付を集めるという手法もありますが、今のところする予定はありません。その理由はまたいずれ)

「一般社団法人カナリアハート」の公式サイトはこちら⇒ https://canariaheart.org/











posted by カナリアハート at 12:03| レスパイトハウスについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月10日

大きな力をいただいた話。

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中日新聞に「レスパイトハウス」についての記事が掲載されてから、これまでに多くのお電話を頂戴しました。その中で、ある方と名古屋駅で待ち合わせてお会いしました。ご寄付を直接手渡ししたい、というお申し出をいただいたからです。

初対面なのに、とても親近感が湧いたのはなぜかわかりません。傍から見たらとても初対面の二人には見えなかったと思います。

お互いの子どもの話に花が咲き、亡くなった子どもの事を笑顔で他人に話せるなんて思いもしなかった、と彼女は言い、その後、決して少なくない金額の寄付を手渡ししてくださいました。正直、初対面でこんな多くの金額をいただくことに抵抗すらしたのですが、彼女はこんな話を聞かせてくれました。

成人し、離れて暮らしていた息子さんが時折帰ってくることが楽しみだったそうです。
現在は、家で一人でいるといろんな事を考えてしまう。

だから、仕事を複数こなし、忙しく過ごしているそうです。幸い職場はどこも良い関係で続けているとのこと。
でも家でもなにかできることはないかと、空いた時間に内職をするようになったそうです。

手を動かしていれば余計な事は考えずに済む、そう思っても、きっと作業をこなしながら思うことは、息子さんの
事でしょう。私も、息子が生まれた時からの事を、一体何度思い返したことでしょう。

今回のご寄付は、その内職の一年分のお給料だということでした。
「このお給料を何に使おうか、って思ってた時に新聞記事を読んで、これだ、と思いました」とおっしゃってくださいました。
HPにも目を通してくださり、自分と同じ思いの人がいると思ってくださったそうです。そして衝動的にメールをくださったそうで、普段はなかなか行動に移さない性分なのに「おかあさん、次はこれだよ」と息子さんに背中を押された気がしたともおっしゃっていました。

私は、「レスパイトハウス」プロジェクトを、もしかしたら無謀な取り組みなのではないか、といつも考えています。賛同してくれる人がいったいどれだけいるのだろう?これまでにこういった場所がなかったということはすなわち需要がないということなのか?そんなことを常に(今も)自問自答し続けながら進めています。決して自信があってしているわけではありません。

なので、今回かけていただいたお言葉にどれだけ勇気づけられたことでしょう。
目の前のお金、そしてそこに込められた思いを全部受け取って、絶対に有効に使わせていただきます、とお約束しました。
孤独なようで、必ず私たちは繋がっています。今の生活の中で目に見えなくても、声を上げないけれど、同じ思いの人がいることを確信できれば、私たちはまだ生きていけると思うのです。

いつか屋久島でお会いしましょう、とお約束してお別れしました。







posted by カナリアハート at 01:05| いろんなこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月08日

2018年11月1日付け中日新聞朝刊より

2018年11月1日付け中日新聞朝刊に掲載された記事です。以下↓
* * * * * * *
教員の行き過ぎた指導で追い詰められて自殺する「指導死」で子どもを亡くした母親三人が、自殺で家族を失った人に心を癒やしてもらう保養所を、鹿児島県の屋久島に開く。苦しい胸の内を打ち明けられなかったり、周囲の対応に傷ついたりして苦しむ遺族に休息する場を提供したいと考え、開設費用の寄付を募っている。(浅井弘美)
 準備を進めるのは、二〇一一年六月に愛知県立刈谷工業高校で、野球部顧問による他の部員への体罰を見たことをきっかけに自殺した山田恭平さん=当時(16)=の母・優美子さん(49)=同県刈谷市=と、〇四年五月に埼玉県立高校三年だった井田将紀さん=当時(17)=を失った母・紀子さん(65)=相模原市、〇四年三月に長崎市立中学校二年だった安達雄大さん=当時(14)=を亡くした母・和美さん(57)=福岡県宗像市。いずれも指導死の遺族だ。
 山田さんは、わが子を救えなかったことに自責の念を抱いてきた。恭平さんの兄や妹の前ではつらさを顔に出さないようにしてきたが、「誰にも会いたくない時や、一人になりたい時もあった」と明かす。
 「自分と同じような人を支えたい」と考えた山田さんは、二年ほど前に保養所づくりを思い立った。同じ境遇であることから知り合った井田さんと安達さんに相談すると、二人ともすぐに賛同。今年六月、施設を運営する社団法人「カナリアハート」を設立した。
 開設場所の屋久島は、山田さんの亡父が仕事で訪れていた場所で、豊かな自然の中で安らかな気持ちになってほしいと選んだ。保養所の名前は「休息の家」という意味の「レスパイトハウス」とした。
 山田さんが現地に自費でカフェを建てて移り住み、保養所は敷地内に別棟として建設して建築費と運営費を寄付で賄う。利用者の宿泊費や食費は無料にし、将来は交通費も法人で負担する構想。寄付金の目標額は五百万円とし、十月からホームページ(HP)などで募り始めた。
 山田さんは「島では知り合いに会う心配がなく、『家族から少し離れたい』と思った時に応えられるはず。つらさを回避する手段の選択肢を増やし、自死遺族を癒やせる社会に変えていきたい」と願う。運営が軌道に乗れば、自殺者の遺族だけでなく、殺人事件などの被害者や加害者の家族も受け入れたいとしている。問い合わせは山田さん=080(5125)0024=へ。HPは「カナリアハート」で検索。
    ◇
相次ぐ悲劇 今年も
 子どもが「指導死」に追い込まれる悲劇は後を絶たない。教育評論家武田さち子さん(60)の調査では、指導死とみられる事案は一九八九年以降、未遂を含め七十八件に上る。
 昨年三月には、福井県池田町で担任教諭らから叱責された中学二年の男子生徒=当時(14)=が飛び降り自殺。今年七月には岩手県の高校のバレーボール部で、顧問の教諭から厳しく指導された部員の男子生徒=当時(17)=が自殺、遺族が指導死だったと訴えている。
 武田さんは「先生は多忙で余裕がない場合が少なくない。時間をかけて生徒と話し合うこともできず、簡単に強い圧力で反省を促す。非正規教員をどれだけ増やしても、正規教員を増やさなければ、先生にゆとりは生まれない」と話す。
 「『指導死』親の会」代表の大貫隆志さん(61)=東京都=は、指導死がなくならない背景について「学校の中で懲罰的な指導が強化され、子どもの心の負担が大きくなっているのではないか」と指摘。山田さんらが建設を目指す保養所については「非常に素晴らしい。当事者ならではの細かな気配りが行き届いた施設になるのでは」と歓迎する。


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posted by カナリアハート at 20:44| いろんなこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする